【BUELL THUNDERBOLT S2】
サンダーボルトS2とS3のツーショットなんて、なかなか珍しい絵で始まる今回の作業例。
左はウチの車両なので今回の主役は右側のサンダーボルトS2です。

経年劣化によるFRPのクラック(ワレ)修正と塗装表面に上がったガラス繊維の模様消し、
多色塗り分けオールペイントが今回のオーダー内容です。
毎度の事ながら下地処理には相当の時間が掛かりそうです。
まずは打ち合わせから。
どんな内容のオーダーでも、作業者である僕と発注者であるお客様とのイメージのすり合せは
とても重要な作業の一つだと思います。メールや電話、直接お会いしてなど可能な限り、
お客様の構想や趣味趣向等をお伺いしてから実作業に入るのが当方の基本的スタイルです。
只今ペイント色の打ち合わせ中!
十分にプランが出来上がってから作業に取り掛かります。
オーナーさんの手によって取り外されたパーツ達が持ち込まれました。
FRP製のカウリングには無数のクラックが確認できます。ビューエルはかなり振動の大きいオートバイなので
小さなクラックも放っておくと大きな亀裂に成長する可能性大です。
写真では解り難いかもしれませんが、塗装表面は全体的にFRP繊維の目が浮かび上がっています。
パーツ自体はメーカー品と言うよりは手作り感溢れる一品で、この年代のBUELL社の体制が伺えます、
何てったって総パテ仕上げですから!?今では考えられない工程です。
ひたすら地道な下地作業。
FRP製品で塗装表面にヒビが出ている場合、その原因の大半は土台に問題が有ると考えています。
ですから表面だけの処理(パテやサフェーサーのみ)では根本的な修理にはならず、
せっかく塗装し直しても時間と共にまた同じ様な症状が現れてくる事が大半です。

その様な事態を避ける為にはこの様な地道な下地作業が必要不可欠だと当方は考えます。
建築同様、塗装も下地(基礎)部分がとても重要なのです。
各補修作業と、全てのパーツの表面に上がったFRP繊維の目をサンディング処理で削り落した後、
下地塗料を塗装して熱乾燥させれば板金工程が終了になります。

色々と問題があった箇所も綺麗に仕上がりました。
只今調色作業中。塗り替え作業において、ここはもっともオーナーさんの好みが出るところなので、
十分にご要望をお伺いして可能な限りイメージに近づけるようイメージを膨らませて色を作って行きます。
明度/彩度/色相、メタパールの粒子/フロップ性、透過/隠ぺい性等を考慮して経験と感覚で色を作ります。
下地塗料が乾燥したら最終研磨に入ります。
ここでの作業が最終的な仕上がりに大きく影響してくるので、慎重かつ丁寧な仕事が必要とされます。
塗装・乾燥・磨きが終了し完成!!
このカラーリングに、んっ!と来た方はおそらくコアなHARLEYファンではありませんか?
そうです、今回のモチーフはずばりルシファーズ・ハンマーです。
VRワークスパターンの塗り分けをルシファーズハンマーカラーでBUELLに施す。
脳天痺れる位僕好みな発想で、オーナーさんセンスの良さが伺えますね。
サンダーボルトとルシファーズハンマーのMIXで
結果、ルシファーズ・サンダー(悪魔のいかずち)と命名しました。
下地から仕上げに至るまでの全てにおいてコダワリまくった1台の完成です。
中でも茶色部分のペイントカラーは特別にこだわった箇所かもしれません。
あまりにも気に入ったので、この色をルシファーズ・ブラウンと名付けました。
色の深さと光のあたり具合によって見せる様々な表情。オトナにお勧めのペイント色です。
今後、僕の仕事に幾度となく使われる色になりそうな気がします。
修正箇所もこの通り。
黒の泥除け部分はブツブツした表面と半艶消し具合も再現してあります。
強度的にも当方が最良と考える工法で修正してあります。
後日、組み上がった車両で遊びに来てもらえました。

アメリカンデザインとジャパニーズクオリティーのペイントワークの融合は反則的。
荒々しさと上品さがバランス良く収まっていると思います。
黄色に染めたスクリーンシールドもお気に入りポイントです。

オーナーさんの愛情と空調設備の整った保管環境で、
これからもこの貴重な1台はベストコンディションを維持し続けていく事でしょう。

マイナー車なので維持するのは楽じゃ無いけど手放す気はさらさら無いそうです。
僕も一緒(笑)

WE LOVE THUNDERBOLT ! I LOVE AMERICAN MUSCLE !!

手間の掛かるペイント工程はギュンと飛ばして完成の図.。